組合が取り組む業務の主なものは2つあり、一つが、新しいマンションの建設。もう一つが、古いマンションの権利を新しいマンションの上に移行させる「権利変換」という手続きになります。建替法の施行により、この権利の移動が安全・確実に行えるようになったことで、マンション建替えが実施しやすくなりました。
●権利変換とは
建替えをスムーズに進めるためには区分所有権だけでなく、借家権や抵当権などの権利関係が新しいマンションの権利に移行する仕組みが不可欠です。等価交換ではデベロッパーと区分所有者がそれぞれ契約を結んでこの権利移行を行っていましたが、建替法では「権利変換」という法定再開発事業で用いる手法によって行います。権利変換計画に、従前の権利が一定の日(権利変換期日)に新たなマンションの権利へ置き換わることを定め、これに伴って区分所有権などの上に設定されていた抵当権などの権利も自動的に新しい権利の上に移行します。
●権利変換手続きの流れ
(1) 権利変換手続き開始の登記
建替組合は、組合設立認可の公告後すみやかに、「権利変換手続き開始の登記」申請を行います(55条)。この登記後は、旧マンションの権利処分をするときは、建替組合の承認を得なければならなくすることで、組合が知らないまま行われる取引を防止します(組合は正当な理由がなければ承認を拒めません)。
(2) 権利変換を希望しない旨の申出
権利変換を希望せず、権利を金銭で買い取ってもらうことを希望する場合は、組合設立認可の公告から30日以内に申し出ます。その際の買取額=補償費は、不動産鑑定士などの専門家により評価します。借家人においても、権利変換後の借家権の取得を希望しない場合は同様に申し出ます。
(3) 権利変換計画の作成と総会決議
建替組合は住戸選定の結果や権利変換を希望しない旨の申出等を受けて権利変換計画の原案を作成します。原案は総会において5分の4以上の賛成での承認が必要です。議決の割合等について特別な規定があるので注意が必要です。
(4) 審査委員会
権利変換計画の原案についての総会決議を行う場合は審査委員の過半数の同意が必要です。審査委員には学識経験者として弁護士、公認会計 士、不動産鑑定士、コンサルタントなどが就任します。
(5) 関係権利者の同意
権利変換計画の内容は施行マンションとその敷地について権利を有する者(組合員を除く)に影響を及ぼします。そのため、借家権者、底地権者、隣接施行敷地所有者等については必ず、それ以外の抵当権者などの担保権者等については原則として同意を得なければなりません。
●権利変換計画で定める内容
次の事項を定めることが決められています(建替法58条)。
●住戸の選定、位置決め
新しいマンションに住戸を取得する区分所有者により行います。公平性を保ちながらも、各人の要望を可能な限り反映できるような配慮が重要です。かつてあった事例として、年金生活の高齢者で資金負担の少ない住戸しか選択肢がない(外れたら転出せざるを得ない)人が、賃貸での運用を考えている区分所有者と重なった場合について、予め、最小タイプの住戸については実需を優先するというルールを作ったものなどがあります。
●権利変換の同意について
①総会における組合員の議決権および持分割合の各5分の4以上の多数で決することが出来ます。しかし、現実的には全員の要望をできるかぎり反映した計画を作成することが重要になります。住戸選定の結果に不服で、建替え計画そのものに反対する区分所有者が現れるケースもあるため、建替法では、権利変換計画の議決より2ヶ月以内に、議決に賛成しなかった組合員への売渡請求、また反対に、賛成しなかった組合員から組合への買取請求が出来るようになっています。
②旧マンションの借家権者・抵当権者など、原則として全員の同意を得る必要があります。そのために、事前より交渉を始めておく必要があります。(同意が得られない理由が正当なものであり、損害を与えない措置が適切である場合は、都道府県知事の認可はなされるので、理由書等を添付し、認可申請を行います)
③審査委員(専門的かつ中立的な立場で関与する、弁護士・税理士・不動産鑑定士などで構成)の過半数の同意。