「マンション建替え」の現場では、様々な問題に遭遇します。そんな中のひとつです。
建物の専有割合に対して、下図のように、土地も同様に建物の専有と同じ割合で共有しているものと考えます。現在のマンションでは、あたりまえのことです。でも、古いマンションですと、そうとは限りません。
(専有面積割合)
1983年区分所有法改正(昭和58年5月21日法律第51号〔建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律一条による改正〕)により、マンションの土地建物は一体的に登記されるようになりました。
この改正以前は、マンションの土地建物の権利移転が行われた場合には、土地と建物は別物であるということから、各々で移転登記をしていました。ということは、稀に、土地、建物が別々で処分されることがありました。
また、民法(第250条)では、「各共有者の持分は、相等しいものと推定する」となっています。今では、考えられませんがこの法文に則り、建物の専有割合とは別に、土地については共有者全員が同じ割合で所有しているものもあります。
(土地の持分は等しい)
つもり、1983年以前のマンションには、
(1)マンションの土地、建物で所有者が違う
(2)土地・建物と持分が違う
ということがあります。
「マンション建替え」を実施する前までは、これらの問題は問題となることがありません。日々暮らしているとき、貸すとき、売却するときは、問題になりません。しかし、マンションを“解体”するとき、したときは、建物のみの所有者の場合はマンションの権利がまったくなくなります。
マンションの建替え時においては,従前の建物を取り壊して再建することを前提としています。その際の従前資産評価は、建物の価値をゼロとし,正味の土地の価値(更地価格マイナス建物解体費用)を従前資産総額とします。従前資産総額が土地の価値のみであるとするならば,各権利者への配分は登記上の土地共有持分によるのが原則となってしまいます。
(1)の場合
建物所有者の評価をどのように扱うかが問題となります。扱い方によっては、建物権利者の賛同は得られなくなります。
(2)の場合
A AはCの専有面積の2倍の大きさ
そもそもの購入価格が違う
C Cは長年にわたり、土地の固定資産税をAと同額払っている
基本的には、評価配分を同等とするか、差をつけるかの問題です。土地権利割合の原則を堅持しつつ、Aの意見を少し、加味して決着を図っていくということになります。
ただ、(1)、(2)の場合とも、決着を図るプロセスを間違ってしまうと、“建替え”等の事業の進捗を危ういものにしてしまうぐらいの爆弾であるとも言えます。
いずれにしても、関係権利者とのコミュニケーションを充実させることと、不動産鑑定士を入れるなどのしっかりした対応が必要となってきます。
建物の再建は歪な権利関係を、すっきりとしたものにしなければなりません。それらの整理が合意形成を難しいものにしています。
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ナカマーク
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